テレビ山梨番組審議会だより

第537回 番組審議会議事要録

開催日時
9月17日(火) 午後3時
開催場所
山梨県立やまなし地域づくり交流センター 大会議室
委員の出席

委員の総数 8名
出席委員数 8名

【出席委員氏名】
安達 義通  委員長
泉田 友紀  副委員長
浅川  徹  委員
佐藤  弥  委員
杉田 真一  委員
手島 俊樹  委員
伏見  彩  委員
堀内 麻実  委員

【放送事業者側出席者】
原田由起彦   代表取締役社長
金丸 康信   相談役
鈴木 淳郎   常務取締役
駒沢 克昭   取締役報道制作局長
岩﨑  亮   報道部長
番組審議会事務局

番組審議会
審議事項
「スゴろくニュース」内の終戦特集
審議、意見の概要
●もう少し教育内容にまで踏み込んでもよかったのではないか。なぜ楠木正成が忠誠の象徴だったのか。どんな人物像が英雄的に扱われていたのか。背景となる説明があったほうがよかった。

●時代背景を補足してもよかったのではないか。小林さんが国民学校に入学した昭和16年は、国民学校令により尋常高等小学校が国民学校に改められた年であり、いろは音名唱法が当時の文部省によって義務化された年でもある。そんな背景の話があると軍国教育が色濃く行われたことへの理解に繋がり、終戦後の中学で敵性語だった英語を学ぶ事が正反対の教育という表現に繋がったのではないか。

●今年から戦時中の暮らしを伝える活動を始めたそうだが、なぜ今行動を起こそうと思ったのか聞いてみたかった。身近に体験の語り部がいることを学校教育にもっと生かしていく必要があると感じた。

●入社1、2年目の若手社員が担当し、たどたどしいところもあったが、新鮮で好印象を受けた。歴史の伝達にとどまるのではなく、過去の教訓を元にこれからの時代をどうしていくのか、若い世代が真剣に考える番組作りを若手社員に期待したい。

●戦前の軍国教育というテーマが戦争体験談を語る切り口として新鮮に感じた。誰でも身近で今にも繋がる問題として考えられる内容で良かったのではないか。

●戦争を知らない30代40代の子育て世代に見てもらえるような特集だといいと思う。空襲の悲惨な様子が放送されることが多かったが、当時の子供たちの様子や教育のことをあまり知る機会がなかった。とても興味深く視聴することができ、身近に感じられてよかった。

●「体験者プラス現代の人たち」というところに落とし込んでいけると、もう少し“つなげる”というところで価値のある特集になると思う。

●知らない方は歴史的な部分も全然わからない状態で見るため、オープニング映像で簡単にまとめてから特集に入るとより見やすいのかなと思った。

●5分番組などで定期的に掘り下げてやると、もっと暮らしの中に定着して良いのでは。

●従軍日誌に、蓄音機の音を聴いて甲府市の澤田屋で食べたケーキの味を思い出したことが綴られていたが、平和な日々を過ごしていた頃との対比が現代とも通じるものがあり、当時の異常さを浮き彫りにしていたのではないか。

●若者の見方から掘り下げるのは、多くの視聴者の側に立ったものであって、非常に効果的だった。ただ、このテーマを取り上げた理由を問われた記者が「あまりこれまで注目されていない視点」と答えていたが、戦時教育や子供への影響などは戦後研究も多く、非常によく論じられているので違和感があった。

●20代の松島アナが対話する形で構成され、恐怖体験や壮絶な想いがうまく引き出されていた。当時の現場を巡りながら、空襲の日のことを詳細に記憶していて、自分の内面の葛藤や衝撃的な光景を生々しく語り、最後の「戦争なんて絶対駄目だ」という言葉に、より力強さと重みが生まれていた。

●文字や映像のみで戦争の事実だけしか知ることができない若い世代にとって、“確かにそこにいた人”に焦点を当てて、戦争の恐怖や壮絶な体験を語ってもらうことは大変有意義だ。私達の世代にも大きな責任があるが、特にグローバルに生きていく若い世代には、どうしていったらいいのかを発信していってもらえればと思う。感想を述べるだけではなく、「じゃあ私達はどうしていくか」まで突っ込んで話をしてほしい。

●毎年8月に各報道機関で太平洋戦争の特集を組んでいる。徐々に戦争を体験した人が少なくなり、当時の資料映像も同じようなもので、放送内容が画一化している。体験者が不在の時代に向かう中で、証言を伝える報道は現実的に限界となっていく。どのように伝えていくのかを考えていって欲しい。「日常は当たり前ではない」「悲惨な戦争は二度と起こすまい」と唱えるだけではなく、戦争の愚かさを知り、平和を心から希求する。次の時代、世代の1人1人に訴えかける番組を目指して、制作者の強い思いを伝えるような、創造力と誠実さを持った番組作りをしてほしい。

●大月の郷土資料館は身近に戦争の傷跡を見ることができる施設で、悲惨な話を聞くだけではなく悲惨さを見ることができる施設の紹介は大切だ。

●戦後79年経っているのに、世界では戦争が起きて若者が最前線に立たされ、消耗品のように使い捨てにされていく様を見て、「平和を求めるなら政治から目を離すな」という言葉を引き出していると思った。

●軍国教育という偏った教育がもたらしたものは、本当は仕方がなかったという言葉で片づけていいのか。戦争は駄目、戦争を起こしてはいけないという当たり前のことだけではなく、戦争を作り出す教育の重要性をしみじみ感じさせた放送だったのではないか。「戦争になったら」と考えるだけでも否定されている今だが、では日本が戦争を仕掛けられたらどうなのか、と感じた。

●15日は構成が大変上手くできていた。澤田屋のケーキは兵隊さんから見ると平和の象徴で、女学生から見ると砂糖もない食料物資の困窮の現状である。「困窮の中で頑張っています」「でも不平は言いません」、でも最後に「兵隊さんは幸せね」と言うくらい本当は辛いんだということを言っているのかと思いながら、何か小説を読んでいる感じだった。

●女学生みんなで玉砕の話に「花を咲かせました」という言い方をしていた。英雄談になっているが、アッツ島で何が起こったのか、もう一度ちゃんとみんなで話し、真実を伝えていくことが大切。

●体験者が毎年いなくなっていく中、こういった企画は大変貴重で、証言を残しておくことはものすごく重要だ。アーカイブ化していく必要がある。

●澤田屋についての手紙のやり取りは一番面白かった。澤田屋の前を結構通るが、あんな歴史があったんだと。ケーキの話や建物の内容、それからレコードを聞いたとか、そういう内容も含めて、甲府の昔と今が繋がったような感じがした。実感を持って戦前の甲府と私個人が繋がれた。戦争からずれるが、甲府のイメージがものすごく豊かになったという意味では、貴重な内容で面白く見ることができた。

●あえて逆張り的に言うが、軍国主義イデオロギーの中で、子供たちが「戦争賛美」「兵隊賛美」をしていて洗脳されている、洗脳は怖いという話があった。それはその通りだが、“子供たちが自分たちで考えている”というのであれば、逆に、例えば今の平和教育も親や教員からの押し付けになってしまっている面もあるのではないか。正しいことだからOKだということもあるかもしれないが、洗脳という意味では天の邪鬼的に言うと、これも一種の洗脳かもしれないと、かなりうがった見方をしてしまった。洗脳をどうとらえるか、もう少し引いてみる力もあれば面白いと思う。

●戦時中、言論統制はあったかもしれないが、大手マスコミが進んで戦争を先導する役割を果たしたとよく聞く。マスコミ側でちょっと自己批判的に、自分らの現在を戒めるような意味でも、戦争におけるマスコミの役割を考えてみる企画も良いのでは。

●「市民は無垢で、権力者は悪だ」という構図で書かれることがよくある。時代は違うが日露戦争の後の日比谷焼き討ち事件、関東大震災後の朝鮮人殺傷事件など、権力者の洗脳とは関係なしに市民が暴徒化し、集団ヒステリーを起こすこともあったと思う。おそらく戦争中もそのようなことがあったんじゃないか。「あなたたち市民も集団パニックが起こり加害者に加わることもありますよ」ということも、市民にメッセージを伝えるための一つの切り口として特集を組めないだろうか。

以上